ナース ☆☆☆☆☆
(ナース / 山田 正紀 / ハルキ・ホラー文庫 2000)
裏表紙の説明には「壮絶ノンストップホラーアクション」と書いてありますが、それどころじゃありません。
飛行中に異変を生じたジャンボ機が山中に墜落し、生存者なし――ところが、現場へ向かった警察も自衛隊も医療関係者も、想像を絶したとんでもない事態に遭遇して、死ぬか発狂するか無我夢中で逃げ出すかという始末。実は、バラバラになったり焼け焦げたりして凄絶な状態になっている遺体(の欠片)が、動き回って襲って来るという「死霊のはらわた」もかくやという状況になっていたのです。そんな常軌を逸した現場へ向かうのは、日本赤十字から派遣された、使命感に燃える7人の看護婦チームでした。
戦車ならぬ救急車を操って、地獄めいた怪異の渦巻く山中へ突入する7人(おそらく「七人の侍」や「荒野の七人」を意識しているのでしょう。キャラクターの描き分けも、よく似ています)は、包容力と物に動じない胆力でメンバーをまとめるベテラン婦長・丸山晴美、冷静な判断と断固とした行動と公平無私な態度を貫き“軍曹”と呼ばれる主任・水島理恵、ヤンキー上がりで態度は悪いけれど度胸の据わった森村智世、プロ意識の塊のような斉藤益美、がっしりした体躯で力仕事に威力を発揮する安田美佐子、最年少の19歳の准看・山瀬愛子、そして能力が劣るため“お荷物”扱いの遠藤志保――このうち志保は、途中で発見した少女の遺体を抱き締めたまま、正気を失った状態に陥っています。やがて、ヘッドライトの中に、3人分の遺体が合体した不気味な姿が浮かび上がり、志保が抱いている少女の遺体を引き渡せ、と迫ります。どうやら、彼ら(米軍や自衛隊には、なんらかの情報があるようなのですが、正体は明らかにされません)の目的のためには、その死んだ少女が重要な意味を持っているらしいのですが・・・。
(大げさに言えば)人類の運命を託された看護婦たちは、自らに課せられた「遺体を収容し、安置する」(この場合は、動き回っている遺体をおとなしくさせて、遺族に引き渡せるようにする)使命を果たすため、“ルシファー”と名付けた存在に挑むのでした・・・。
生々しい遺体(とその断片)の描写は、初期のクライヴ・バーカーか友成純一作品かというグロなスプラッター全開ですし、前半を読む限りでは単なるハイパースプラッター小説かと思ってしまいます。ところが、途中で「AΩ」的な設定が飛び出してくるあたりから、作者の山田正紀さんが過去の作品で繰り返し描いてきた定番の道具立て――人知を超えた存在との対決、国家的隠蔽、チームワークで難関に挑んでいくプロ顔負けのアマチュアたち――が、惜しげもなく(たぶん書いているほうも無意識のうちに)次々と展開されて、計算しつくされた構成とストーリーテリングの妙に夢中にさせられてしまいます。
題材が題材だけに、スプラッターが苦手なかたにはお勧めできませんが、クーンツやマキャモンでも、こんなに“感動的な”ホラーが書けるかどうかという気分にさせられてしまう、拾い物の名作と言えます。いよいよ現場に突入する直前の水野主任の訓示(?)は、「火神を盗め」の主人公が某国の工作員に向かって啖呵を切る「日本のサラリーマンをなめるなよ」に匹敵する鳥肌ものの名セリフでしょう。
オススメ度:☆☆☆☆☆
【追記】
せっかくなので、「荒野の七人」とキャラクターを対応させてみたいと思います(カッコ内は演じた俳優)。
(オリジナルの「七人の侍」は、よく覚えていないので(^^;)
クリス(ユル・ブリンナー) =丸山婦長 そりゃもちろん、リーダーですから。
ビン(スティーヴ・マックイーン) =水野主任 頼りになるサブリーダー。
ブリット(ジェームズ・コバーン) =益美 生真面目な“求道者”タイプ。
ハリー(ブラッド・デクスター) =智世 世の中を斜に見ているチョイ悪キャラ。
オライリー(チャールズ・ブロンソン) =美佐子 野暮だけれどハートは熱い。
リー(ロバート・ボーン) =志保 自信を無くした“お荷物”が最後に大活躍。
チコ(ホルスト・ブッフホルツ) =愛子 最年少で、物語を通じて一人前に成長。

ナース (ハルキ・ホラー文庫 や 1-1) - 山田 正紀
裏表紙の説明には「壮絶ノンストップホラーアクション」と書いてありますが、それどころじゃありません。
飛行中に異変を生じたジャンボ機が山中に墜落し、生存者なし――ところが、現場へ向かった警察も自衛隊も医療関係者も、想像を絶したとんでもない事態に遭遇して、死ぬか発狂するか無我夢中で逃げ出すかという始末。実は、バラバラになったり焼け焦げたりして凄絶な状態になっている遺体(の欠片)が、動き回って襲って来るという「死霊のはらわた」もかくやという状況になっていたのです。そんな常軌を逸した現場へ向かうのは、日本赤十字から派遣された、使命感に燃える7人の看護婦チームでした。
戦車ならぬ救急車を操って、地獄めいた怪異の渦巻く山中へ突入する7人(おそらく「七人の侍」や「荒野の七人」を意識しているのでしょう。キャラクターの描き分けも、よく似ています)は、包容力と物に動じない胆力でメンバーをまとめるベテラン婦長・丸山晴美、冷静な判断と断固とした行動と公平無私な態度を貫き“軍曹”と呼ばれる主任・水島理恵、ヤンキー上がりで態度は悪いけれど度胸の据わった森村智世、プロ意識の塊のような斉藤益美、がっしりした体躯で力仕事に威力を発揮する安田美佐子、最年少の19歳の准看・山瀬愛子、そして能力が劣るため“お荷物”扱いの遠藤志保――このうち志保は、途中で発見した少女の遺体を抱き締めたまま、正気を失った状態に陥っています。やがて、ヘッドライトの中に、3人分の遺体が合体した不気味な姿が浮かび上がり、志保が抱いている少女の遺体を引き渡せ、と迫ります。どうやら、彼ら(米軍や自衛隊には、なんらかの情報があるようなのですが、正体は明らかにされません)の目的のためには、その死んだ少女が重要な意味を持っているらしいのですが・・・。
(大げさに言えば)人類の運命を託された看護婦たちは、自らに課せられた「遺体を収容し、安置する」(この場合は、動き回っている遺体をおとなしくさせて、遺族に引き渡せるようにする)使命を果たすため、“ルシファー”と名付けた存在に挑むのでした・・・。
生々しい遺体(とその断片)の描写は、初期のクライヴ・バーカーか友成純一作品かというグロなスプラッター全開ですし、前半を読む限りでは単なるハイパースプラッター小説かと思ってしまいます。ところが、途中で「AΩ」的な設定が飛び出してくるあたりから、作者の山田正紀さんが過去の作品で繰り返し描いてきた定番の道具立て――人知を超えた存在との対決、国家的隠蔽、チームワークで難関に挑んでいくプロ顔負けのアマチュアたち――が、惜しげもなく(たぶん書いているほうも無意識のうちに)次々と展開されて、計算しつくされた構成とストーリーテリングの妙に夢中にさせられてしまいます。
題材が題材だけに、スプラッターが苦手なかたにはお勧めできませんが、クーンツやマキャモンでも、こんなに“感動的な”ホラーが書けるかどうかという気分にさせられてしまう、拾い物の名作と言えます。いよいよ現場に突入する直前の水野主任の訓示(?)は、「火神を盗め」の主人公が某国の工作員に向かって啖呵を切る「日本のサラリーマンをなめるなよ」に匹敵する鳥肌ものの名セリフでしょう。
オススメ度:☆☆☆☆☆
【追記】
せっかくなので、「荒野の七人」とキャラクターを対応させてみたいと思います(カッコ内は演じた俳優)。
(オリジナルの「七人の侍」は、よく覚えていないので(^^;)
クリス(ユル・ブリンナー) =丸山婦長 そりゃもちろん、リーダーですから。
ビン(スティーヴ・マックイーン) =水野主任 頼りになるサブリーダー。
ブリット(ジェームズ・コバーン) =益美 生真面目な“求道者”タイプ。
ハリー(ブラッド・デクスター) =智世 世の中を斜に見ているチョイ悪キャラ。
オライリー(チャールズ・ブロンソン) =美佐子 野暮だけれどハートは熱い。
リー(ロバート・ボーン) =志保 自信を無くした“お荷物”が最後に大活躍。
チコ(ホルスト・ブッフホルツ) =愛子 最年少で、物語を通じて一人前に成長。

ナース (ハルキ・ホラー文庫 や 1-1) - 山田 正紀
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